銭湯ぐらしの部屋より〜201号室・伊藤 直樹

おはなし

2018.6.18

text by 銭湯ぐらし

ゴールをあえて決めず、個人の「やりたい」を実現するための場として始まった「銭湯ぐらし」。結果的にメンバーの数だけプロジェクトが生まれ、様々な分野に対して銭湯の可能性を提示することができました。

また、「暮らしながら参加する」というプロジェクトの形は、新しい働き方や居住スタイルのあり方としても、とても興味深い事例になりました。

そんなプロジェクトを完結させるにあたり、1年間限定の「銭湯のある暮らし」を体験した「湯パート」住人たちに、その暮らしぶりや部屋のコンセプト、忘れがたいご近所物語を聞いてみました。湯パートは彼らに何を残してくれたのでしょうか。

伊藤 直樹
1990年生まれ。新潟県出身。新聞記者に憧れて上京、新卒で朝日新聞社に入社しニュースサイト「朝日新聞デジタル」のディレクターとして月間3億PVを超えるサイトとアプリの改善に従事。2016年よりモバイルアプリの改善ソリューションを提供するスタートアップに参画し、マーケターとして市場創出から新規顧客の獲得まで幅広くおこなう。

——お部屋をひとつ自由に使っていいよと言われたとき、どう思いましたか?

DIYみたいな好きなことをしようと思いました。壊してもいいんだったら何してもいいや、と。

——最初どんな部屋にしようかと考えましたか?

あまり決めてなくて。友達に任せてたので、みんなで考えて6〜7人で一斉にペイントしました。まあ、銭湯に関係するものにしようと。僕は家にいるタイプじゃないというか、朝早くて夜遅いので、なるべく家にいるときくらいは銭湯のことを考えるようにしようと。

僕の部屋、いちばんエキセントリックな感じなんです。壁、青だし。家具もなんもなくて。冷蔵庫もないし洗濯機もないし。で、後ろになんかすごいスペア座みたいな富士山描いて。

——コンセプトみたいなものってありますか。

コンセプトは一言で言うと「悪ノリ」です。いや~この色の青やべえんじゃないかとか、すげえ寝にくいとか、頭おかしくなりそうだなと思ったけど、まぁみんな楽しそうだからいいやと思いつつも、そのままずっと住んでた感じ。

——ちゃんと寝られましたか?

まぁまぁ、ちゃんと寝れました(笑)。

——DIYというと、モノを作る方もいますけど、伊藤さんは壁にペイントを?

そうですね、壁に塗ったくらいだね。そんな、家具作ったりまではしてないです。

——インパクトは十分ありますね。

本当ですか、ありがとうございます。

——すごい素敵だと思います。お友達と塗ってでき上がったお部屋とのことですが、感想はいかがですか?

僕は結構いいかなと思ったんですけど、みんな「いかつすぎて自分なら住めない」って(笑)。

——あんまり生活感が見えないような感じですね。

そうですね。それは部屋にまだ家具があったころにもすごく言われた。生活感がないねって。でも、実際そうですね。ここで風呂に入る、コインランドリーで服を洗う。部屋は寝るための場所って感じで住んでました。

——お部屋作りでこだわったポイントは……?

壁はめいっぱい使おうと思ったから、大きいのをボンボンと描こうとして「富士山と銭湯」みたいな感じにしちゃった。あとは物のこだわり、みたいな。

電気もなんか、しょうもなかったから、最初、間接照明とかを置こうと思ったんだけど、逆に剥き出しにしちゃって。

——家具を置かないぶん、壁いっぱい使えますね。

(値段じゃなく)高い家具はまったくなくて。ベッドじゃなくて布団だし、本とかも壁にそのままボンと。せっかく描いてもらった絵をなるべく見えるようにはしたかな。

——1年間生活されて、感じたことはありますか。

101号室の集会室とかは思い出かも。僕が入ったばかりの時に、女の子にフラれちゃって。まだ、たいしてお互いに知らない時期に、みんなで慰めてくれて。まだ始まったばかりの去年の3月とか4月とかです。「これから決戦に行ってきます」みたいなことを言ってたんですけど。

そうしたらみんな本当に待っててくれて。「まぁ、飲もうよ」みたいな。っていうのはすごいいい思い出っすね。それは一緒に住んでるからだなって。みんなに「ちょっと振られました」って報告して。っていうのはいい思い出です。

——絆を感じます。

感じますか(笑)。

——最後に、銭湯が隣にあって、自由にしていいお部屋があって、という特殊な環境で生活されてみて、いかがでした? 当初とのギャップなどはありますか。

こんなに銭湯が日常化するとは思わなかった。もちろん、風呂なしアパートで隣が銭湯だから毎日通うんだろうなとは思っていましたが。

いま、僕はアパートを出ているんですけど、銭湯がないと落ち着かない。それくらい、自分にとって欠かせない存在です。

平日だったら疲れをリセットする場で、土日なら昼に入るときもあったけど、休憩がてら行くみたいなこともすごく多かった。ギャップという意味では、ここまで「不可欠」というか、自分の中で無いと気持ち悪くなる状態にまでなるとは思わなかった。

あとはやっぱり、アパートの住人みんな知り合いなので。

それこそ銭湯で会って、平日の夜12時とかに軽く飲みに行くか! とか、そういうのがあったのはよかったなって思う。「暮らしてんなあ」って。なかなかね、離れてるとそういうことできないから。

インタビュー:金野まりな、写真:菅谷真央、編集:雨田宇以

執筆

銭湯ぐらし

SENTOGURASHI

この記事は銭湯ぐらしのメンバーが執筆しました。