銭湯ぐらしの部屋より〜203号室・雨田 宇以

おはなし

2018.7.5

text by 銭湯ぐらし

ゴールをあえて決めず、個人の「やりたい」を実現するための場として始まった「銭湯ぐらし」。結果的にメンバーの数だけプロジェクトが生まれ、様々な分野に対して銭湯の可能性を提示することができました。

また、「暮らしながら参加する」というプロジェクトの形は、新しい働き方や居住スタイルのあり方としても、とても興味深い事例になりました。

雨田 宇以
1987年生まれ。北海道出身。早稲田大学卒業後、印刷会社営業を経て出版の道へ。出張先の京都で銭湯愛にめざめ、それ以来いつでもどこでも銭湯に入れるようにタオルとシャンプーを持ち歩くようになる。いつか寅さんのロケ地巡りをしたいと思っている。

——まず「銭湯ぐらし」を始めるにあたり、この部屋を使っていいよ、と言われたときにどう思いましたか。

単純に、すごいタイミングがばっちりだったんですよいろいろと。仕事や人間関係が去年はちょっと大変動で。いい機会だなって思いました。ラッキーだなと。ちょうど部屋づくりにも興味が生まれていた時期で。

——では、じっさいにお部屋づくりをするときに、どういう風にしたいな、といった最初の構想はありましたか?

ありました。だいたい構想通りにいったと思います。しいて言えばもっと編集部屋っぽく、真ん中にガーンと編集机を置こうと考えてたんですけど、もらったIKEAの机があまりにも大きすぎて断念しました。でも、一生に一度でも「変な感じ」で住んでみたいと思っていたので、ふつうできなさそうなことをしようと。押入れを白く塗ってみたり、キッチンにタイルを貼ったり。

——コンセプトとしては「できないことをしたい」ですか?

そうですね。あと本をきれいに置きたかった。本棚とテントのある「図書室」にしたいなっていうのは最初にあったので。はい、大体構想通りいってます。

——お部屋にテントがありますね。

アウトドアに行きたいけどなかなか行けないという。その気持ちをこの芝生カーペットとテントで少しだけ叶えています。

——壁もすごく綺麗ですけど、ご自身で塗ったんですか?

壁は手伝ってもらって2人で塗りました。「バイ ミー スタンド」っていう渋谷にあるサンドイッチ屋さんが海外風でかっこよくて、それを目指したつもりです(笑)。

——なるほど。ほかにDIYされたところは押入れですか?

押入れと、あと気に入ってるのがトイレの壁が黒板になっていて。

——ちょっと見ていいですか? かわいいー! 予定が書かれています。

それすごく使いやすくて、いいですよ。これからもやりたいです。

——このお部屋を出てもですか?

そう、でも普通の家だと出来ないから……どうしたらいいかな。東京の賃貸住宅ってえらく狭いし、どこも似ていてあまり面白くないなと思っていて。それが、ここに住んで「自分のイメージどおりに部屋を作るのが楽しいな」と初めて知って、そういう方向に興味がわくきっかけになりました。リノベーションとか。

——出来上がったお部屋は満足ですか?

部屋じたいはやれるだけはやったかな。足がかりにはなった気がします。これからもっといろいろ出来そうだな、と。

——いちばんのこだわりポイントは。

壁の色と、なるべく木を使うこと。あと収納を整えること。色んな人が来るだろうから、見られても大丈夫なように意識しました。3つありますね(笑)。

——インターホンも黄色に塗ったんですね。

最初にコンセントとかも全部塗っちゃったので。コードとかも、ちょっと白く塗ったりするだけでずいぶんかっこよくなるんです。だから、日本の賃貸住宅ももっとかっこよくできるのに本当にもったいないと思って。

——ここのお部屋で暮らしてみて、思い出は何かありますか?

やっぱり銭湯に直接行けるというのがいいですよね。湯パートの裏階段から銭湯の事務所に行けるっていうのが、夢のようなことで。寮生活みたいでしたね。

けっこう今まで夜更かしだったり、いろいろ生活リズムを整えるのに努力が必要だったけれど、銭湯だと強制的に終わりの時間があるから、なんか、タイムスケジュールが作りやすくって、本当に寮生活だったなあ(笑)。

——お隣もメンバーですもんね。

そうですね。もっと合流したかったけど、思ったよりみんな忙しすぎて家にいなくて。それはちょっともったいなかったかなって。

——もうそろそろ終わってしまう銭湯ぐらしですけど、ここで1年くらい生活されてみてどうでしたか?

うーん……銭湯が窓から見えるってやっぱりいいなあと。一生忘れないんじゃないかな。浴室の桶の音が聞こえてくるんです、かぽーんって。

——いいですね。

今ケロリン(湯桶の音)が聞こえたなあとか思いながら部屋にいるのはとてもよかった。本当は「自由に本持ってっていいよ」とかやりたかったんですけどね。

——塩谷(歩波)さんとは結構そういうのしてたって、さっき塩谷さんがおっしゃってました。

あっ、そう(笑)。塩谷ちゃんは結構もってくのよ、本。(笑)

——図書館みたい。

塩谷ちゃんが出張に行くときとかに、「今回の出張に適した本を見つくろってくれ」って言われて「泣ける系? 考える系?」とか聞いて選んだりとか。図書館みたいな感じの部屋になればいいですね、将来的に。でもあんまり増やしてもねえ……。

——地震が来たら「ガンっ」てなっちゃいますしね。

あっ、思い出した!! 雨漏りしたんですよ。この部屋。去年の秋、1ヶ月くらいずっと雨降ってたじゃないですか。10月末くらいに豪雨がきて、ポタポタと天井の隅っこから漏ってて。本を守らなきゃと思って、必死でごみ袋を夜な夜な張りつけて(笑)

——ごみ袋! でもそれくらい大きくないと穴が隠れないですもんね。

で、水をバケツとかお皿とかに溜めて。すごい侘しい気持ちで夜を過ごしたっていう(笑)。

——それはなかなかない体験ですね(笑)。

お隣の部屋もぼたぼた音がしてたからだいぶ漏ってたんじゃないかな。まぁ、壊す宿命にある建物だから、そこもまた愛おしいと思えば愛おしい。

——いい思い出ですね。

そうなんです。

インタビュー:金野まりな、写真:菅谷真央、編集:雨田宇以

執筆

銭湯ぐらし

SENTOGURASHI

この記事は銭湯ぐらしのメンバーが執筆しました。