いざ2018年。だけど、「小杉湯フェス」の興奮が醒めなくて。

できごと

2018.2.5

text by 門上奈央

いまや小杉湯の名物イベントである「小杉湯フェス」。第2回目のレポートは雑誌『Tarzan』の不定期連載「水風呂ハンター門上in銭湯」の中の人……小杉湯を溺愛するフリーライターによる寄稿でお届けします!

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2017年の小杉湯は攻めていた。と、小杉湯を愛する者は誰もが感じたのではないだろうか。

水風呂ハンターという看板を(自ら勝手に)背負っている、ワタクシ門上もその一人だ。

小杉湯スタッフであり銭湯イラストレーターの塩谷歩波(描く銭湯)@enyahonami
銭湯図解はSNSでバズりまくり。『旅の手帖』の連載も絶好調だ。

人気ブロガー・ヨッピーや「ホリエモンドットコム」の記事はほうぼうに拡散、すっかり小杉湯は全国区になりつつある。

銭湯神ヨッピーが語る!東京都内のおすすめ銭湯&交互浴のススメ

銭湯のある日常を再定義、高円寺小杉湯三代目が始めた「銭湯ぐらし」の意味

また小杉湯のスゴさを体感したのは、銭湯の日(10月10日)にちなんでJTとコラボした至福のひととき湯−−ラベンダー×ジェット、果実×熱湯・水風呂、バラ×ミルク!

これまでの銭湯の概念がバラバラッと崩れ去った。大げさでなく、湯船に入って鳥肌が立った(身体は温まりましたよ)。

あらゆる小杉湯ムーブメントが起こった2017年。

しかしワタシにとって、もっとも小杉湯らしいと感じたイベントは、11月23日に行われた「小杉湯フェス」である。

銭湯×フェスの異色イベント「小杉湯フェス」

小杉湯を拠点に、風呂無しアパートに住む銭湯好きのクリエイターたちがコミュニティ「銭湯ぐらし」を結成していることは、小杉湯ファンならすでにご存じかと思う。

そのなかの“歌う銭湯”ことシンガーソングライターの江本祐介氏が主催するのが「小杉湯フェス」だ。

小杉湯の浴室を舞台に、江本氏をはじめ、音楽と銭湯を愛するアーティストが生ライブを行う本イベント。

第2回目が、昨年11月に行われたのだ。

高円寺の「妄想インドカレー ネグラ」と「高円寺麦酒工房」が出店

 

江本氏いわく「全員銭湯にハマっている。音楽も含めて皆“お湯に浸かっている感”がある(笑)」、今回の出演アーティストの皆さんにライブの感想と銭湯への思いをたずねた。

「こんなもんだよな、と思えるのが銭湯」(曽我部恵一)

オープニングを飾った江本氏に続いて、登場したのはシンガーソングライターの曽我部恵一氏。

「『小杉湯フェス』に出演して、『歌はやっぱり自由なんだな』とあらためて感じました。ライブハウスは迫力あるライブサウンドを奏でられる設計になっていますが、銭湯は言うまでもなく浴場。だけど、そもそも歌はどこでも歌えるんだよな、と思いました。なおかつ、その歌を届ける相手も、友人、家族、知らない人……誰でもいいわけで。歌は自由だな、ずっとそうあってほしいなと歌いながら思っていました」

「銭湯は、頭で考えなくても社会を学べる場所だと思います。それに『あぁ、人間こんなもんだよな』と思える場所。風呂入って、家帰って寝る。きっと皆そうだよなって。それに入浴している人は皆、なんかほっとした顔していていいよね。インターネットは個人主義だし、つながりを感じられる場所は減り続けている。そんな今みたいな時代こそ、銭湯って貴重だよね」

「銭湯では立つ場所、聴く場所で音が変わる」(yojik)

やわらかなハーモニーが心地よい「yojikとwanda」。浴室内がぽかぽかぬくもるようだった。

yojik「銭湯で歌うのは初めてでしたが、すごく気持ちよかったです。歌い出しは浴室特有の音響に正直自分の耳が慣れませんでした。でも、歌ううちにいつしかなじんでいって、40分間のステージを楽しめました。今回はお客さんにも声を出してもらったんですが、もうちょっと歌えば、もっと自分の音になじんで、気持ちよくなれたかもしれない! 歌ってるうちに音が耳になじんだり、立つ場所や聴く場所で音が変わるところが、銭湯で歌うことの面白さかもな、と」

wanda「『小杉湯フェス』では、ステージが男湯と女湯を交互に使うスタイル。僕たちは女湯で歌いましたが、ステージでない男湯で聴いたら、音が女湯とは違う響き方で聴こえる。場所によって音の回り方が変わるのは、かなりユニークですよね。僕は小杉湯にも何度か来たことがありますし、普段はライブ前にはよく銭湯に行くんです。汗をかきやすいから、髪をふわっとさせた状態でライブしたくて(笑)」

yojik「男性は化粧する必要ないからうらやましい〜!」

「『皆、同じ空間にいるんだな』って感じられた」(ナナ)

マイルドな音色のデュオに癒される「ラッキーオールドサン」。なんと篠原良彰氏は「東京銭湯 お遍路マップ」※ も攻略間近という、生粋の銭湯好き!

※東京都浴場組合が発行する、都内約560件の銭湯に設置したお遍路さん用のスタンプを押すノート(貯まれば認定証を獲得!)。都内の銭湯好きなら必携の1冊。

篠原良彰「週1ペースで銭湯に通っています。今回、銭湯で初めて歌いましたが、お客さんとの距離の近さをすごく感じました。普段銭湯に行ったときも、その距離感がいいなあと思ってて。たとえば小杉湯でミルク風呂に浸かっていると、気付けば見知らぬ人と世間話を交わしている……そんな距離感(笑)その分、歌い始めは緊張もしましたが」

ナナ「配管が通っているからか、床が温かくて気持ちよかった……! それにライブハウスは真っ暗ですが、ここはお客さんと目線が合う明るさだから、歌っていても『皆、同じ空間にいるんだな』って感じられました」

ナナ「私は疲れがピークに達したときに銭湯に行って考え事をします。じっくり、反省会を(笑)そういう時間が欲しくて来るのかもしれません」

篠原良彰「僕はエネルギーを充電するためですね。熱い湯に浸かったら、苦悶の表情を浮かべてうなっていますが(笑)。今回、江本くんからお誘いをもらったときは『銭湯で歌えるの?』とびっくりしましたし、うれしかったです!」

「裸は神聖。ここは神聖な気が集まる場!」(カネコアヤノ)

「ずっと江本さんに『小杉湯フェス呼んでください!』ってお願いしてたから嬉しい!」と、歌も人柄もエネルギッシュなカネコアヤノ氏。

「今回歌わせていただいて、いい意味で感覚がおかしくなりました! こんな天井が高いところで生で歌うことはないから……教会と近いのかな? とも思ったり。今日はアコギの音よりもずっと自分の声の方が通ったんですよね。だから天然リバーブで、楽器もたくさん入れて録音できたら最高かも。超楽しそう。やりたい〜(笑)」

「銭湯はずっと今のまま、町に残り続けてほしいです。無理に時代に合わせなくていい。あるがままで……。あと、しわしわの身体のおばあちゃんを見るのが私は好きなんです。傷があったりするのも、その人の歴史ですし、かっこよくないですか? 裸って神聖なものでもありますよね。だから銭湯は特別な“気”が集まる場なんじゃないかな」

「ライブハウスとは、なにかが圧倒的に違う」(王舟)

エンディングは、ひっそりと音色を奏でるギターと語りかけるような歌声で魅せてくれた王舟氏。

「銭湯は音の中域がすごく響きますね。僕にとっては、もう一人の自分が、向こうで対になって歌っているような感覚でした。また足下の方……浴室の底にはギターの低音が溜まる。だからジェットバスのように地面が一つ深くなる浴槽は、演奏していても面白い。お客さんも感じたんじゃないかな。それにライブハウスで聴く音楽と、地域に根ざした銭湯で聴く音楽は、なにかが圧倒的に違う気がします」

「銭湯の魅力は、入浴以外のことから遮断されることな気がします。今の時代、あんまりそういう場所はないから。後は、み〜んな同じように見えること。裸一貫で、私服姿がさっぱり想像できない(笑)。銭湯は自然にコミュニティが生まれる場ですよね。極論、約束するほど会いたくなくても会える……でもそれって悪くないなと思うんです」

「いつか地方の銭湯をツアーで巡りたい!」(江本祐介)

本イベントの主催者であり“歌う銭湯”の看板を背負う江本祐介氏。今回の「小杉湯フェス」は「もう楽しかったっす!」と即答。

「第2回目も無事に終わりました。特に狙ってはいなかったものの、出演アーティスト全員、銭湯のムードにめちゃくちゃハマってましたね。音がとけるというか湯気みたいなイメージ。今後の展望? うーん、なんかもう満足しちゃったかも(笑)」

爆弾発言にうろたえる筆者を前に、いたずらっぽく江本氏は笑い、言葉を続けた。

「嘘です、これからもいろいろやりたい。たとえば温冷浴しながら見られるイベントとか(水着着たりね)! あとは地方の銭湯にツアーしたいな。俺が車用意するから皆で行こうぜ〜って感じで!」

アイディアの泉でもある小杉湯は、どうやら沸騰寸前のようです。

レポを書いてると私まで、どくどく、アドレナリンが湧いてきた……今から水風呂でクールダウンとします。ごきげんよう〜!

執筆

門上 奈央

NAO KADOKAMI

水風呂ハンター兼フリーライター

雑誌『Tarzan』(マガジンハウス)で不定期連載『水風呂ハンター門上in銭湯』やってます。ワタシが水風呂に目覚めたのは、ここ小杉湯(2015年)。まいど、覚醒と快眠をありがとう!