「小杉湯フェス(第2回)」速報リポート

できごと

2017.11.23

text by 安藤菜々子

先程終わった(上がった)ばかりの第2回小杉湯フェス。

本日の様子を、速報としてお届けします。

13:00 開場

さっきまで大粒の雨が降っていたのに、出番を待っていたかのように陽が出てきた。

小杉湯の天井は高くて、めいっぱい日差しを取り込んでくれる。

アーティストだけでなく会場全体を、自然のライトが照らしてくれるあたたかいステージだ。

お客さんの腕にはフェスのリストバンドと、脱衣所のロッカーキーがついたリストバンド。

銭湯とフェスがお客さんの腕で見事に融合している。

本日の主催者でありトップバッターの江本祐介のステージは女湯で開催。

普段入ることのない女湯に、男性のお客さんは少し照れくさそうだ。

13:30 江本祐介@女湯

本日の初ライブ。ちょっと所在なげに揺れていた会場が、江本の演奏開始と同時にぴたりと止まる。

初めて小杉湯フェスに来た人はきっと、なんて音楽の映えるスタジオだろうと思ったことだろう。

江本の優しく澄んだ声と柔らかなギターの音はそのまま湯気のように上へ上へ伸びてゆく。

「お手洗いの場所がわからず困ってる人がいたら教えてあげてくださいね」

主催者としての優しい気遣いに、あたたかい笑いが起きる。

演奏を終えた江本は、そのまま次の曽我部恵一のステージへ。もちろんお客さんの一人として。

14:10 曽我部恵一@男湯

まるで湯船に浸かりながら小さく口ずさむかのように演奏がスタート。

湯船に浸かりながらの歌と違うのは、たくさんのお客さんが聴いていること。

1つの音も聴き漏らすまいと脱衣所までしんとする。

崩れ落ちて もつれ合って 浮かんでは沈んで”

あたたかな声で歌われたその歌詞は、湯船の中に浮かんでは消える水泡を彷彿とさせる。

「やっぱり気持ちがいいですね。ずっと歌っていたいような」

自身も「風呂屋」が好きだという曽我部は、本当に気持ちよさそうに話してくれた。

右手にコーヒー牛乳が見えそうだ。

「ライブハウス以外の場所で歌うの、好きなんです。歌とは本来、どこで歌っても、誰に向けて歌ってもいい。自由なものだから」

肩書も衣服もとっぱらわれる銭湯だからこそ、その自由な演奏がより映えたのかもしれない。

15:05 yojikとwanda@女湯

現在関西と関東で遠距離ユニットのお二人だが、息はぴったりで距離を感じさせない。

二人の歌声はぴったりと合わさったまま浴室に響いてゆく。

浴槽のへりに腰掛けてみたり、その上に乗ってみたり。

参加者と歌ってみたり、動きながら演奏したり。

さまざまな角度から、表情の違うリバーブを楽しむ。

ぱちぱちと跳ねる水滴のようなみんなの声が、浴室にこだました。

「マイクとは違う音に最初は戸惑ったけど、たった40分の演奏ですぐに耳が慣れて。自然のリバーブが気持ちよかった(yojik)」

「女湯での演奏を男湯で聞くとまた違う響き。機械で調整はできないけど、場所によって別の楽しみができる(wanda)」

楽しみながらの演奏だから、聞いているほうも楽しくなる。

よくツアー先の銭湯に行くというyojikと、ライブ前に銭湯に行く事が多いというwanda。

「温泉ではなく銭湯に行くとその土地の人と距離が近くなる」

今日のお客さんとの距離もきっと近くなったはずだ。

16:15 ラッキーオールドサン@男湯

日が落ちてきて、浴室のライトがついた。

少し暗くなった会場でやわらかい歌声を重ねるラッキーオールドサン。

二人の声は滑らかで、あたたかなタイルに染み込んでいくようだ。

小杉湯も利用したことがあるという二人。

普段、いち利用者として来ている銭湯で歌うことは戸惑いもあったよう。

「お客さんとの距離。普段自分が入ってるお風呂でお客さんの前で歌うのは、慣れた銭湯だけどとても新鮮だった(篠原)」

それでも、夕暮れの中を歩くような切なさと、「ぬる湯」のようなやわらかな暖かさで、聴く人を芯からあたためる。

「銭湯は充電の場所。一度無になれる(ナナ)」

心なしか聴いている人たちもリラックスして思い思いの場所で聴いている。

今日は湯船ではなく、彼らの歌に充電されているようだ。 

17:10 カネコアヤノ@女湯

男湯から聴いていても自分に向かって歌われているのかと思うくらい、まっすぐに届く歌声。

力強い彼女の声は、一度天井に届いた後、全員に等しく降り注いでくる。

「声が(天井を伝って)回ってくる感じ。自分でギターの音が聞こえなくなるくらい。すごく楽しかった」

彼女自身楽しんでいるからだろうか。

銭湯に癒やされる人も、勇気づけられる人もいると思うが、彼女の歌を聴いているとなんだか勇気づけられる。

「天井が高くて、教会みたいですよね」「この湯船に楽器を置いて演奏したらまた違う響きで楽しそう」

ライブが終わってからも、楽しそうな姿は変わらない。

トリの王舟のライブでも、浴室から聴いたり、脱衣所から聴いたり。さまざまな場所で楽しんでいた。

18:05 王舟@男湯

「昔風呂なしアパートに住んでいた時があって。その頃は毎日銭湯に行っていました」

アーティスト写真も銭湯で撮ったものと、なにかと銭湯と縁のある王舟。

歌声の深さに、じんわりと身体があたたまる。

「自分の向かい側に、もう一人自分がいるような感覚で音が響く。自分の声がまだ残っているのがすごく新鮮だった」

「もし浴槽に頭まですっぽり入って演奏したらどんな風に聴こえるんだろう? 面白いですね」

多くのライブをしてきた王舟にとっても、小杉湯でのライブは新しいものだったようだ。

そんなライブを聴いているお客さんは、みな浸るように音楽に身をゆだねている。

すっかり日が落ち冷える帰り道だが、きっとあたたかな気持ちで帰ってもらえたのではないだろうか。

「みんななんとなく銭湯に合いそうだなと思ってはいたけど、改めて聴いてみると“お湯に浸かっている”ようなあたたかいアーティストに来てもらったと思う」 

主催の江本も、参加者の例に漏れずあたたまったようだ。

今日の様子は後日改めてロングレポートを掲載予定です。

更新をお楽しみに!

銭湯ぐらしtwitterより

追記:小杉湯フェスの模様がYahoo!ニュースに掲載されました。

11月24日付の高円寺経済新聞配信「高円寺「小杉湯」で音楽フェス 曽我部恵一さんら6組の生歌が浴室に響く /東京」という記事が「Yahoo!ニュース」に掲載されました。

記事は小杉湯フェスや「銭湯ぐらし」について取り上げたもので、“洗い場や浴槽に並べられた風呂椅子に座る人や脱衣場まであふれた立ち見客ら約50人は一気に静まり返り、浴室に響く歌声に耳を傾けていた。”と、当日の模様が報じられています。

引用:Yahoo!ニュース
執筆

安藤 菜々子

NANAKO ANDO

昼は広告の会社で経営企画。夜は銭湯で近所のおばあちゃんの膝の話を聞くのがすき。